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バクスターWeb公開セミナー「血友病保因者健診への提唱」Q&A

世界血友病デーである4月17日(木)に、バクスターにより、患者さんとそのご家族、並びに医療従事者を対象としたインターネットセミナーが開催されました。

「血友病保因者健診への提唱」というテーマで、座長として大阪医療センター 西田恭治先生が、ご講演者として東京医科大学 天野景裕先生、篠澤圭子先生がご出演され、血友病保因者と保因者健診に関するセミナーが行われました。また、血友病保因者お二方がご出演し、先生方と活発なディスカッションがなされていました。
今回のインターネットセミナーでは、視聴者の方々より多くのご質問を受け取られています。そのため、講演された先生方より、こちらのホームページにて、質問の中よりいくつかの回答について掲載いたします。

回答頂いた先生方
大阪医療センター 感染症内科 西田 恭治先生
東京医科大学 臨床検査医学分野 教授 天野 景裕先生
東京医科大学 血液凝固異常症遺伝子研究寄附講座 講師 篠澤 圭子先生

Q: 保因者診断を受けることのできる病院の紹介
A: 凝固因子検査は外部検査センターに委託できるので、どの医療施設・クリニックでも可能ですし、保険診療で出来ます。しかし、この検査で依頼者の出血傾向の見当は付きますが、保因者診断としての確度は低いです。また、その結果の解釈にも専門医の知識と経験が必要かもしれません。
遺伝子検査は可能な施設が限られています。しかし、家系的に確定保因者であれば遺伝子検査による保因者診断は不要ですし、逆に例えば患者さんの息子の娘である孫娘のような遺伝的に推定保因者でもあり得ない場合も不要です。保因者依頼者が遺伝子検査の必要性があるのか、あるいは可能なのかを含めて主治医に相談していただき、主治医を通じて検査施設に相談・紹介していただくのが賢明だと思います。
Baxter社「おしえて!保因者診断のこと(血友病の保因者診断への道筋)」の冊子などが、参考になると思います。

Q: 私は重症血友病の患者です。中学生の娘に保因者健診を受けてもらうために、どのような話をしたら良いでしょうか。ポイントがあれば教えてください。
A: ポイントがあるとすれば、この質問の答えにはならないかもしれませんが、早い時期から血友病というものに親しませておくことが健診導入を容易にさせるかもしれません。例えば、家庭注射の準備のお手伝いをさせるとか、患者会や患者キャンプに同行させるのも良いと思います。
そういう機会がなくて中学生になられたのであれば、このネットワーク・サイト内に「私と私の遺伝子(http://hemophilia-japan.org/contents/library/2-2-1/2-2-1-1/2-2-1-1-1.html)」のアニメを活用していただき、分かりにくいことは先生に訊いてみようと勧めるのはいかがでしょうか?
実際の診察室でのポイントは、御両親は何を話しているのか心配かもしれませんが、彼女と医療者だけにするということが大切だと思います。お父さんが同席していると、お父さんを気遣ってなかなか正直な質問が出来ないとか、ボーイフレンドとの話を切り出せないなんてことはよくあります。

Q: 以前、確定保因者である私の妊娠時に、ふつう分娩(経腟分娩?)で問題ないと言われました。何かあった場合、すぐに帝王切開に切り替えることができるので問題ないとのこと。いつの時点でも、帝王切開へ切り替えることはできるのでしょうか?普通の方に比べ、ふつう分娩と帝王切開で、保因者であることによるリスクはあるのでしょうか?
A: 当然かもしれませんが、何かあって切り替えた帝王切開とあらかじめ準備していた帝王切開とでは、一般的な話ですが安全性には差があるようです。リスクの差は経腟分娩の場合は、お母さん側では出産後の出血、患児側では頭蓋内出血だと思われます。しかし、お母さんが保因者であるかもしれないという認識が出産時に医療者にあるだけで、経腟分娩でもそのリスクは随分軽減できるようではあります。
一般の方の帝王切開率は年々増加しており、米国で約30%、日本でも約20%らしいです。欧米においては、保因者の帝王切開率もさらに増加しており、経腟か帝王切開かの議論も盛んなようです。日本においては、そのような議論はほとんどなく、今後は少なくとも産科医を取り込んでの議論は必要と考えられます。現在、日本産婦人科・新生児血液学会と日本血栓止血学会の協働で血友病保因者のための周産期ガイドラインの作成を検討しています。

Q: 運動をすると皮下出血で青くなりびっくりすることがあります。今回のセミナーを拝見したのですが、自身が保因者の可能性があることを学びました。そのため、あざが引かない場合の対応方法はあるのでしょうか?
A: あざ自体は、美容的な問題を除いては問題なく、放っておけばよいと思います。ただ、皮下出血でビックリということは、凝固因子活性が保因者の方の平均よりも低い可能性があります。皮下出血程度ではなく、大きな怪我や手術に備えてご自身の因子活性を把握しておかれることをお勧めします。

Q: 保因者に広く開放している窓口などはないでしょうか。相談できる場所があれば教えてください。
A: 保因者の窓口を標榜しているところはないと思います。しかし、保因者のケアも包括医療の一環と考えますので、身近な主治医や看護師さんに相談されてはいかがでしょうか。また、このネットワーク・サイト内の「ヘモフィリアひろば」というソーシャル・ネットワークで保因者の方のためのコミュニティーが立ち上がっていますので、そちらに参加されるのも情報を得ることのできる一つの方法になるかもしれません。

Q: 保因者でも、凝固因子を投与することはあるのですか?
A: 保因者でも軽症血友病といえる、あるいはさらにはもっと低い因子活性の方もいらっしゃいます。そういう方は、あざ(皮下出血)程度ではない出血もあり、凝固因子投与を必要とすることもあります。